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月かげ129号

南無(なむ)阿弥陀(あみだ)

 ほとけのみなと思(おも)ひ(い)しに

    唱(とな)ふ(う)る人のすがたなりけり

  

            西山(せいざん)上人(しょうにん)

 

台風に荒れた夏も、少しずつ秋めいて参りました。

私(わたくし)ごとになりますが、去る八月十七日、父の弟の千葉の叔父(おじ)さんが亡くなったという知らせが届きました。たしか、八十五歳であったかと思います。叔父さんは、父と同じく東京生まれで、少年の頃、豆腐屋に修業に入り、一生涯、昔ながらの旨(うま)い豆腐をご夫婦で作って、晩年は店をたたみ、悠々自適(ゆうゆうじてき)の生活であったと聞いております。

叔父さんは、父の兄弟の中でも、ひときわ情の深いお方でありました。祖父母や父が亡くなったとき、祖父母や父の体にすがって、おいおいと声をあげて、泣きじゃくっていたのを覚えています。

スーパーが近くにできて、一時、客が離れたが、昔ながらの豆腐を作り続けていたら、客が戻ってきたと、喜んでいたことが思い出されます。

ひとは一人では生きてはいけません。叔父さんの一生は、旨い豆腐をお客さんに届け続けて、暑い夏には冷ややっこで、寒い冬には湯豆腐で、春や秋には美味しい味噌汁で、豆腐を食べる人々を、ひとときの幸福へと導いていたことだろうと思います。

それが、叔父さんの、衆生(しゅじょう)無辺(むへん)誓願度(せいがんど)の菩薩(ぼさつ)行(ぎょう)ではなかったかと・・・。

今頃はお浄土で、父や両親たちと再会し、永遠のいのちとなって、光明の中で、至福のときを迎えていることと思います。

真実、価値あるものとは何か、それは、世間の地位や名誉や金ではない、まごころと使命をもって、謙虚に、そして、安らかに楽しく人生を全うすることでありましょう。願わくは、みほとけと共に・・・。

                     南無阿弥陀仏  合掌