今今と今という間に今ぞ無く
今という間に今ぞ過ぎ行く
道歌
木々の緑が日(ひ)一日(いちにち)と色濃くなって参りました。
下津浦では、みかんの木がたくさんの白い蕾(つぼみ)をつけ、今年の豊作が期待されます。
本山では、三月四月の大行事を終え、新緑の季節を迎えて、美しい若葉を眺めながら精進したいと思います。
さて、念仏の念は今の心と書きます。文字通りに解釈すれば、今の心がみほとけに満たされているのが念仏と理解されます。また、私がみほとけと共にあるのが念仏だともいえます。
さて、過去は既に過ぎ去り、未来は未だに来ていません。年齢を重ねてみると、子供の頃のことはよく覚えているのに、今では数日前の記憶さえ曖昧(あいまい)です。また、未来のことについては、将来のその日その時まで本当に自分の寿命があるのか保証はありません。そうしますと、今日一日をどう生きるかということが一番の問題です。
朝起きて、夜眠りにつくまで、今日この一日をいかに生きるのか。今の心にみほとけを宿し、みほとけの念(おも)いを心に満たして、あらゆる人々、あらゆる存在、あらゆる出来事にあたる・・・。それが念仏者の理想です。
現実には、なかなかそのように日暮らしするのは難しいと思いますが、今日一日、今この瞬間をかけがえのない瞬間として、一生一度、一期一会(いちごいちえ)の生活を心がけたいと思います。
合掌