月かげ第150号

 

大いなるものにいだかれあることを

けさふく風のすずしさにしる

                    山田無文老師

 

 

 

五月二十七日の朝のことでした。

本山の夏季の朝の勤行(ごんぎょう)は、五時半より始まります。その少し前、外は夜来の雨が上がりかけ、気温は二十三度程、少しむしむししていたため、本堂の障子は開け放たれておりました。やがて、お勤めが始まり少したったとき、涼(すず)やかな微風(びふう)を背中に感じました。この微風は、かすかに長く続き、勤行が終わるまで、私を包んでおりました。その時、私は、学生時代の恩師、山田無文老師の「大いなるものにいだかれあることをけさふく風のすずしさにしる」というお歌を思い出し、一切の存在は、私を包み育んでいてくださることを、今更ながら再確認し、実感致しました。

「大宇宙の救済意志を阿弥陀という。それを知らず理解できない凡夫のために、如来四十八願を立て、阿弥陀仏となって救済したもうた」、かつて、本山第八十一世の上田良準御前さまより伺ったおことばです。

 折しも、二十七日の午後には、アメリカのオバマ氏が、大統領として初めて広島を訪問されました。真に活気的な一歩であることを期待します。

大自然は、阿弥陀の救済の面と、荒ぶる神の両面をもっています。

 熊本地震被災者の方々には、心よりお見舞い申し上げます。かつて、私の郷里の新潟は、中越地震に見舞われました。東日本大震災も、阪神淡路大震災も、日本に暮らす限り震災は身近です。いつ南海地震が起こってもおかしくないといわれます。

だからこそ、人間同士は争(あらそ)ってはいけない・・・。そして、止(し)悪(あく)(悪いことをしない)・修(しゅ)善(ぜん)(よいことをする)・利生(りしょう)(ひとのためになることをする)の三聚(さんじゅ)浄(じょう)戒(かい)を持(たも)たなければならない・・・。

 人生において、最もありがたき縁は仏縁です。更に言えば、この私(わたくし)一人(いちにん)を救いたもう念仏の縁であります。

 共々にお念仏をよろこんで参りましょう。

    南無阿弥陀仏    

 合掌