月かげ第163号

たなばたや 秋をさだむる

夜のはじめ

                松尾芭蕉

 

 

七夕の季節となりました。

七夕は、年に一度、夜空で出合う織姫と彦星に、短冊に願いを託(たく)して笹(ささ)に吊るす、日本古来の伝統行事です。

小学校の低学年の頃、クラス全員で短冊に願いを書いて吊るしたことが思い出されます。子供の頃の願いは、一様に純粋で素直な願いでありました。総じては、自らと周囲の皆さんの幸福を願う内容であったと思います。

では、幸福とは何でしょうか。幸福は人それぞれの価値観によって変わるものだと思います。すなわち、ひとからは逆境(ぎゃっきょう)にあるように見えても自分を幸福だと思っている人は幸福です。逆にひとからみれば何不自由ないようにみえても、自分を不幸だと思っている人もいます。ようするに幸福とは一人ひとりの心の問題であろうと思います。お釈迦さまは「知(ち)足(そく)」というみ教えを示されました。また、お釈迦さまは、私たちにお念仏をお勧めになられました。(釈尊(しゃくそん)出世(しゅっせ)の本懐(ほんかい))

日常生活を、素直に阿弥陀さまと共に暮らす、穏やかな日暮(ひぐ)らしこそが、私たちの幸福だと思います。子供の頃、短冊に素直な願いを託したように、阿弥陀さまに素直な心でお念仏をお唱えしましょう。

当山では三年後に五重相伝を勤めます。ご縁を結ばれることをお勧め致します。

南無阿弥陀仏  合掌