月かげ147号

 

今日彼岸

菩提(ぼだい)の種(たね)を蒔(ま)く日かな

 

            詠み人知らず

 

もうすぐお彼岸です。例年春のお彼岸の前後には、旧初午の日に、観音堂で観音さまのご供養をします。今年は十三日(日曜日)です。下津では、「七(なな)とこ参り」といって、下津町内七ヶ所のお堂で、この日厄除けのご回向があります。

当山にお祀りされている聖(しょう)観世音(かんぜおん)菩薩(ぼさつ)さまは、秘仏で、毎年この日だけ御開帳されます。聖観世音菩薩さまの頭上には阿弥陀仏がおられます。観音さまには色々なお姿があり、如意(にょい)輪(りん)観音・准胝(じゅんてい)観音・十一面(じゅういちめん)観音・馬頭(ばとう)観音・千手(せんじゅ)観音・聖(しょう)観音などがおられます。当山の観音堂の脇壇(わきだん)には、西国(さいごく)三十三観世音菩薩さまがお祀りされています。

当山で一番古い建物が観音堂です。観音堂は、天應智呑(てんのうちどん)上人(しょうにん)の代(寛永六年・一六二九年)、袋(ふくろ)谷(だに)より、現在の神田に移転されました。以降、何度か白蟻もついて、修復も重ねて参りましたが、建築の専門家の方々からは、見事な建物であると評価されています。

 旧初午の日に、お稲荷さまをご供養する神社も多いですが、この日、なぜ寺院で観音さまの会式をするかといいますと、それはダキニーというインドの神さまを由来とする茶枳(だき)尼天(にてん)が日本のお稲荷さまであり、お稲荷さまは、大きなご利益をもたらす神さまなのですが、粗末にすると罰(ばち)もきついといわれており、そのお稲荷さまと親しく、やわらかい功徳に変えるみほとけが観音さまであるからです。観音さまがお稲荷さまの大きな功徳を私たちに与えて下さるのです。

インドから伝わった仏教が、長い年月をかけて、日本の神さまと一体となり、今日の信仰となっております。

旧初午の会式が今日まで連綿と続いているのは、それだけ大きな功徳を私たちが授かってきたことが体験として私たちの身心に刻まれているからだと思います。

どうぞ皆さま、一年に一度の御開帳、ありがたい旧初午の会式にお参りされることをお勧め致します。

南無阿弥陀仏    

 合掌