月かげ第227号

ふるさとの山に向ひて

言ふことなし

ふるさとの山は

ありがたきかな

 

石川啄木

今年も、間もなく紅葉の季節です。

また、 秋は実りの季節、みかん採(と)りの季節でもあります。美しい季節を、平和に迎えられることに感謝ですが、世界に目を向ければ、胸が痛む事件、ニュースに溢(あふ)れています。とにかく、戦争だけは即刻やめて欲しい、というのが私たちの素直な願いだと思います。

さて、歳をとると、故郷がむしょうに恋しくなります。随(ずい)暢(ちょう)師匠(ししょう)も事あるごとに、「三(み)佐(ざ)、三(み)佐(ざ)、」と故郷の名前を口に致しました。

私も、一人暮らしの母が満八十八歳を迎え、年に二回は会いに行こうと決めました。故郷新潟まで七百キロあまり、元気な母の顔を見、お墓参りをし、故郷の霊峰八(れいほうはっ)海山(かいさん)を眺め、遥(よう)拝(はい)して参りたいと思います。

私の母方の姓は八(はっ)海(かい)です。八(はっ)海(かい)と読むのは、日本に数軒しかないと以前に聞いたことがあります。八海の姓は、八海山の山伏(やまぶし)で、八海山頼(らい)宝院(ほういん)という真言宗醍醐派(だいごは)のお寺の山号に由来します。

私は、標高一七七八メートルの越後(えちご)三山(さんざん)の一峰であり、日本二百名山の一つである八海山を日々仰いで成長致しました。小学校・中学校・高校の校歌には、全て、八(はっ)海山(かいさん)と魚(うお)野川(のがわ)が歌われています。

朝日に輝く八海山は見事に美しい・・・。そして日本酒「八海山」もまた格別です。

佳(よ)き故郷をもつことをよろこびつつ、ここ下津浦もまた、日本にまたとなき、みろくの里とも言えるふる里(さと)であります。

佳(よ)き故郷をもち、よきふる里(さと)に住む幸福を、しみじみと感じる今日この頃です。

南無阿弥陀仏     合掌