月かげ124号

 

 

今今と

 今という間に 今ぞなく

今という間に

   今ぞ過ぎゆく

 

道歌(どうか)

 

気づいてみれば、長い冬が終わり、桜が満開となりました。

本山では今、加行(けぎょう)の真っ最中、アミダーブナムアの声が境内に響いています。今年は寒さのためか未だ鶯の鳴き声を聴きませんが、満開の枝垂れ桜には花の蜜を求めてか、たくさんのメジロたちが集まっています。カメラを持った観光客の皆さん桜を目当てに多く訪れています。

桜の季節の本山は、まさにお浄土のようです。

今年は本山で修行している五人の随身学生たちが入行(にゅうぎょう)していますが、日々寝食を共にしている彼らの姿が、別人のように感じられ、私も身の引き締まる思いです。四月七日に伝法(でんぼう)、四月八日に伝戒(でんかい)を授かって一人前の僧侶に一歩近づくわけですが、しっかりとお念仏を頂いて欲しいと願っています。

アミダーブナムアは、(ぎょう)(がん)具足(ぐそく)の念仏といわれ、阿弥陀さまのはたらき()に引かれて南無の私が行じてゆくという意味です。これが満行の満座法要を終えると、ナムアーミダーブゥの(がん)(ぎょう)具足(ぐそく)の念仏に変わるのです。阿弥陀さまの願いを宿した南無の私が、人々に念仏を伝えてゆくという意味を表します。アミダーブナムアは、我が宗の僧侶が一生に一度、加行の間だけお唱えする(ぎょう)(どう)念仏なのです。

四月九日、桜吹雪の中、二通の許可状(こかじょう)を胸に荘厳(しょうごん)()に身を包んだ満行の行人たちの顔は浄土の菩薩そのものです。

加行に(たずさ)わって二十三年、今年も十四人の行人たちが、無事満行を迎えることを心より願っています。

   南無阿弥陀仏 

     合掌