今今と
今という間に 今ぞなく
今という間に
今ぞ過ぎゆく
道歌
気づいてみれば、長い冬が終わり、桜が満開となりました。
本山では今、加行の真っ最中、アミダーブナムアの声が境内に響いています。今年は寒さのためか未だ鶯の鳴き声を聴きませんが、満開の枝垂れ桜には花の蜜を求めてか、たくさんのメジロたちが集まっています。カメラを持った観光客の皆さんも桜を目当てに多く訪れています。
桜の季節の本山は、まさにお浄土のようです。
今年は本山で修行している五人の随身学生たちが入行していますが、日々寝食を共にしている彼らの姿が、別人のように感じられ、私も身の引き締まる思いです。四月七日に伝法、四月八日に伝戒を授かって一人前の僧侶に一歩近づくわけですが、しっかりとお念仏を頂いて欲しいと願っています。
アミダーブナムアは、行願具足の念仏といわれ、阿弥陀さまのはたらき(行)に引かれて南無の私が行じてゆくという意味です。これが満行の満座法要を終えると、ナムアーミダーブゥの願行具足の念仏に変わるのです。阿弥陀さまの願いを宿した南無の私が、人々に念仏を伝えてゆくという意味を表します。アミダーブナムアは、我が宗の僧侶が一生に一度、加行の間だけお唱えする行道念仏なのです。
四月九日、桜吹雪の中、二通の許可状を胸に荘厳衣に身を包んだ満行の行人たちの顔は浄土の菩薩そのものです。
加行に携わって二十三年、今年も十四人の行人たちが、無事満行を迎えることを、心より願っています。
合掌