月かげ第240号

生きて身を

蓮(はちす)の上に宿さずば

念仏申す

甲斐(かい)やなからん

 

            西山上人

 

 

師走となりました。

今年はどんなことがあったか振り返りますと・・・。ロシアとウクライナの戦争、イスラエルパレスチナの戦争・・・・。大変な年でした。

十月の末に、ひとりの七十代の男性が阿弥陀寺にお参り下さいました。その方は子供の頃に下津浦に住んでおられたということで、ある檀家さんに大変お世話になったからその方のお墓にお参りしたい、ということでした。

お世話になられた檀家さんは、もう既にお亡くなりになられ、今はお婆さんが長生きされていますが、娘さんの所に行かれて、音信不通となってしまっています。

男性のお話によりますと、高校卒業後、日本各地を転々と周り、いろんなお仕事をして頑張って来られたそうです。家族がおられるのかどうかも詳しくお聞きしませんでしたが、不遇な幼少期に、優しい阿弥陀寺の檀家さんにお世話になったことが懐かしく、自分もこの歳になったからと、昔を振り返って何十年かぶりに下津浦に来られたということでした。 

野志方丈さんの逸話(いつわ)もお聞きして、一緒に懐かしみました。方丈さんは厳しい人だったというお話はよく聞きますが、そのような昔話は、それぞれの人の心に鮮やかに残っています。今は叱(しか)ってくれる人が少ない時代だから、世の中がむちゃくちゃになってきて、精神バランスがとりにくい時代だとも思います。厳しさの中に愛情があるかどうか、皆が幸せに暮らせるように引っぱってくれる、そんなリーダーが求められています。

そして、その男性は用意していた白いのし袋を差し出して「お供え下さい」そうおっしゃったのです。それでお名前をお聞きしたのですが、秘密にしたいからと、言わないで帰られました。後で開けてびっくりしました。

高額なお供えをして下さいました。今回のお供えは先月号でお願いした神野志方丈さんの扁額(へんがく)に使わせてもらうことにしました。他にも寄付をして下さっている方が何名かおられます。本当にありがとうございます。

毎年色々なことがありますが、地元の方や遠方の方、縁ある皆さまの信仰心に、心が洗われます。心より世界平和を願います。

来年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。ⓢ

    南無阿弥陀仏     合掌