月かげ120号

 

(こう)(だい)()しは見しかは見ざりしを

聞きてぞ見つる白河の関

 


 

西山證(せいざんしょう)(くう)上人

 

 早いもので師走となりました。

十二月十一日は、(ずい)(ちょう)師匠三回忌正当(しょうとう)命日です。

師匠が()かれた念仏の種は各地で確実に育っていると思います。中でも師匠の功績は多くの弟子を育てたことカナダ東漸寺(とうぜんじ)を建立したこと、そして、約二百回に及ぶ五重相伝・授戒の(かん)(かい)(説戒)を勤めたことです。そのご縁(あずか)た方々から今も御礼を言われることが度々あります。

正直、師匠を超えるお説教はあまり聞いたことがありません。お念仏を伝えるには、自らが正しい信仰を持たなければ、ひとに伝えることは出来ません。

お念仏を唱えれば幸福になる、これは事実です。更に、阿弥陀仏のご本願の因縁を知れば、そのかたじけなさに(おの)ずと頭が下がります。

法然上人が理想とされた人物像は、讃岐(さぬき)(しょう)()のような(みょう)好人(こうにん)でした。私は師匠の中に讃岐の庄松に通ずる念仏信仰と人間性を感じます。特にひとを分け隔てしない感性は到底及ぶものではありません。

師匠は三回忌を迎えましたが、私の周りでは今も毎日、師匠の話題を聞かない日はありません。それだけ存在感の大きい方であったと思います。

さわやかな春風のような印象を残して、お浄土へと帰られた師匠は、今も皆をお浄土から見護ってくれているように思われます。

    南無阿弥陀仏     合掌