あせたるを
ひとはよしとふ
びんばくわの
ほとけのくちは
もゆべきものを
会津八一
人生は、あっという間だと言われます。
私自身、気づいてみれば、早、還暦(かんれき)を過ぎています。
自分自身の人生を振り返ってみますと、様々な場面がありましたが、やはり一番のよろこびごとは、今生(こんじょう)において、この身このまま、本願(ほんがん)念仏(ねんぶつ)に救済されたことです。
もし、お念仏に出(で)遇(あ)えていなかったらと考えますと、我ながらぞっとします。
親鸞聖人が「氷(こおり)多きに水多し、障(さわ)り多きに徳(とく)多し」と『高僧和讃』に詠まれていますが、仏縁の不思議に身の引き締まる思いです。
私も還暦(かんれき)を迎え、体力の衰えを感じるようになりました。しかし、逆に自分を支える目に見えない大いなる存在については、今までよりもむしろ、敏感に身近に感じるようになったと思います。
私の大学の恩師、山田無文老師のお歌に、
大いなるものに抱(いだ)かれあることを
今朝ふく風の涼しさに知る
と、あります。
祖母が口癖のように言っていた「今日も一日お護(まも)り頂きまして、ありがとうございます」という神仏やご先祖さまへの感謝のことばが、我が身にしみじみと実感されるようになったことは、信仰に出(で)遇(あ)えた一つのよろこびです。
南無阿弥陀仏 合掌