月かげ第190号

あせたるを 

ひとはよしとふ

びんばくわの 

ほとけのくちは 

もゆべきものを

           会津八一

 

人生は、あっという間だと言われます。

私自身、気づいてみれば、早、還暦(かんれき)を過ぎています。

自分自身の人生を振り返ってみますと、様々な場面がありましたが、やはり一番のよろこびごとは、今生(こんじょう)において、この身このまま、本願(ほんがん)念仏(ねんぶつ)に救済されたことです。

もし、お念仏に出(で)遇(あ)えていなかったらと考えますと、我ながらぞっとします。

親鸞聖人が「氷(こおり)多きに水多し、障(さわ)り多きに徳(とく)多し」と『高僧和讃』に詠まれていますが、仏縁の不思議に身の引き締まる思いです。

私も還暦(かんれき)を迎え、体力の衰えを感じるようになりました。しかし、逆に自分を支える目に見えない大いなる存在については、今までよりもむしろ、敏感に身近に感じるようになったと思います。

私の大学の恩師、山田無文老師のお歌に、

大いなるものに抱(いだ)かれあることを

今朝ふく風の涼しさに知る

と、あります。

祖母が口癖のように言っていた「今日も一日お護(まも)り頂きまして、ありがとうございます」という神仏やご先祖さまへの感謝のことばが、我が身にしみじみと実感されるようになったことは、信仰に出(で)遇(あ)えた一つのよろこびです。

                      南無阿弥陀仏  合掌