月かげ第239号

 御身(カラダ)と精神(ココロ)を

 大切にして

 充分人生を

 愉(たの)しみなはれ

 

            美山荘 中東吉次  (『美味しんぼ』より)

 

 

今年も残すところ二ヶ月となりました。

つい先日、うちの方丈(ほうじょう)にある若い男性が「方丈さんは食事とか作ったりするんですか」「洗濯とかするんですか」と尋ねたそうです。

方丈は、「食事はほぼ作ったことないです。洗濯はたまにするけど、ほぼしていません」そう答えたそうです。するとその男性が、「ええなぁ・・・。昭和の男は羨(うらや)ましい」そう言っていたそうです。あたり前に食事が出てきて、掃除も洗濯もしてくれる、それが昭和の男かなぁ・・・。その男性は一日くたくたに働いて帰ってからも、食事を作ったり、洗濯したり、子育ても手伝って、休む暇もない、という話でした。そこで、私が一言、当然ですが、「昭和の男でも、食事洗濯を毎日している人は沢山いてるよ。方 丈はしてないけどね」と言いたくなりました。

だけど、私が考えるに、「うちのお父さんは帰ったら、何(なん)もせーへん」と言うていたある息子さんの話を聞いて、「そりゃ、お父さんは何(なん)もせーへんのあたり前よ、何(なん)もせんでもええよ」そう言ったことがあります。そのお父さんがどれだけ働いているかを知っていたからです。そして、「昭和の男はいいな」と言うていた男性もすごく頑張って働いている人なので、気の毒になりました。

 奥さまも子育てを一人で大変だと思いますが、ママ友とランチに行ったり、親に預けたり、それなりにストレス解消はしていると思います。それぞれ、人によって環境も性格も体力も違うのでよその家のことはいえませんが、やっぱり自分の心に正直に、そして、我慢せず、ストレスはためないのがいいと思います。

昔、あるお寺の奥さまが本堂の建て替えで瓦(かわら)を洗う仕事を檀家の皆さんと一緒にして、檀家の方々は交代するのですが、その奥さまは毎日働き続けて、本堂が出来たとたんに亡くなったとお聞きしたことがあります。昭和の時代の話です。

誰も自分と変わってはくれません。だけど、自分を守るのも自分です。横にいて気がついてくれるかと言えば、そんなこともないのです。その話をお聞きして、教えられた気がしました。言いたいことははっきり言わないとわからない。無理はせず、長い人生を自分なりに楽しく生きて欲しい。

死んで仏様になったと言われても、悲しいばかりです。

皆が羨(うらや)むほどに、仕事も楽しく、無理をせず、元気に生き生きとそれぞれ輝いて欲しいと思います。

 

   南無阿弥陀仏      合掌         ⓢ