月かげ第220号

春筍

祖母の里より

賜(たまわ)りぬ

           草間時彦

 

 

うぐいすの鳴き声が聞こえてきます。

春になったら、山東(さんどう)の筍(たけのこ)の香りが懐かしいです。丁度、二十年前、十五年間お世話になった山東の薬善寺から下津浦阿彌陀寺に引っ越し(入山)しました。随仁が十四歳になる春で、中学二年生でした。何もかも初めての土地で、前住職の神野志方丈さんとの同居も始まりました。木蓮(もくれん)の白い花が咲いてとても綺麗な春でした。一緒にご近所さんにご挨拶に連れて行ってもらい、方丈さんが、花祭りの甘茶(あまちゃ)を竈(かまど)で仕込んでいたのが懐かしいです。

随峰さんは毎年、御本山の加行(けぎょう)と御忌会のお手伝いで、ほぼ三月四月は留守で、私と随仁が二人で軽のワゴンアールに乗って、泣きながら来たのを思い出します。まー。泣いていたのは私だけですが・・・。

阿彌陀寺には大きな桜の木が二本あって、

前住職夫妻が五十年前に植えたと聞きました。だから、もう七十年です。多分、戦後植えたのでしょうか、今年は戦争が終わり、七十七年です。日本では『大東亜(だいとうあ)戦争(せんそう)』と呼んでいたそうですが、私たち世代は学校で『第二次(だいにじ)世界大戦』としか、習いませんでした。

 ウクライナとロシアで戦争が始まり、世界中で戦争反対の声が上がるなか、多くの市民が犠牲となり、止めることが出来ない状態です。どうして、こんなに、戦いが続くのでしょうか。歴史教科書はどんどん書き換(か)えられ、その当時の真実は謎(なぞ)となります・・・・。

明日、どのようなことになるかもわからないのがこの世の常ですが、阿弥陀仏(あみだぶつ)信仰(しんこう)ひとすじに、綺麗な桜を眺(なが)めながら、今年も甘茶を炊きたいと思います。

どうぞ、八日の花まつり、お参り下さい。

                 南無阿弥陀仏  

                         合掌 ⓢ